コーヒー豆
昨年このマンションに引越して来た時、家のあらゆるところにコーヒー豆のようなものがあった。
とくに押し入れの中やシンクの下にたくさんあった。
まさしく、形、大きさ、色、コーヒー豆そのものなのだ。
コレを私は通称『コーヒー豆』と呼んでいる。
だがそれは、明らかにコーヒー豆ではない。
コーヒー豆は、今年5月くらいからまた家の所々に現れはじめた。
押し入れ、シンクの下、トイレの片隅、脱衣場のランドリーボックス。
コーヒー豆は、どうやら暗くて湿気の多い場所を好んでいるらしい。
そして、くっつくことが出来る。
壁、衣類、フラットなところより、少しでこぼこしていたり、つかまるところがあったほうがくっつき易いみたい。
だが、コーヒー豆は動いたりはしない。
コーヒー豆の正体は、ゴキブリの関係者でないかと、私は踏んでいる。
手足や触覚などはないが、色は同じである。
潰した時の感触もよく似ている。
好む場所も似ている。
そしてある日の深夜、脱衣場でゴキブリを発見した時、すぐ近くにあったランドリーボックスの中の子供のTシャツにコーヒー豆もくっついていた。
そのTシャツは、その日の夜シャワーを浴びる直前に脱いだことから、数時間前まではそこにはなかったことが推測される。
だが、コーヒー豆はおそらく動くことが出来ない存在である。
ってことは、何ものかが運んで来たのだろうか?
その、何ものというのは『ゴキブリ』ではないだろうか?
いずれにしても『コーヒー豆』と『ゴキブリ』には深〜い関係があるに違いない。
つい先日、エアコンのフィルターを取り外す時ふと目に入った。
いままでずっと気付かなかったのか!?
白い天井に薄らとこげ茶色が見える部分がある。
元々細かいでこぼこのある天井なのだが、良〜く見ると少し膨らみが大きい部分がある。
家中の天井を見回してみると、あっちにもこっちにも同じようなところがあるではないか。
感の良い方はもうお解りでしょうが、コーヒー豆は天井にも存在したのだ。
完全に白い壁材で覆われて、全くこげ茶を見せてないもの。
薄らこげ茶が見えるものがある。
たくさんのコーヒー豆達が白い壁材に覆いつくされてしまったのだろうか…。
この家、かなりいい加減な造りだから十分に考えられる。
むしろ、それだったらまだましかもしれない。
そうであることを願う。
コーヒー豆を覆っている『白』は天井と同じ色をした『繭』であるより、壁材の白であって欲しいと。
